戯れせんとや生まれけむ

作/たま

水攻め、か。
一度思い付くとやってみなければ気が済まないたちである。
俺にとってこの世の全ては遊びだった。ひたすら血の沸くことを追い求め、気付けば天下は己が手にあった。
何でも思いのままになるというのは案外つまらぬものだ。俺は倦んでいた。

しかし、近頃はどうも様子が違う。俺の思うようにことが進まぬ。手下の者がこの俺に意見する。どうやら水面下で覇権を狙う動きがあるとみた。
面白い。ならば目にもの見せてくれる。真の覇者は誰であるか、思い知らせてくれる。そうした思いもあったが、何より、堤が決壊し大水が城下を呑み込む様を、ただ、見てみたかった。

そして時は満ちた。
俺がコップを傾けると同時に、なみなみと注がれていた牛乳がテーブルの上にさあっと広がり、こたつ布団をしとどに濡らした。
俺は満ち足りた思いで小さく身震いし、おしめの生暖かい湿り気を感じながら、「おかあさーん」と手下の者を呼んだ。