面白いのはここからだ。
書いては消し、消しては書いての繰り返し。
男は書き損じた誤字を丸く塗りつぶしたかと思うと、その丸を除々に広げ、そのまま幾重も連なる円を書いた。

毎週月曜日の朝刊に掲載される男の小説は、その意表を突くオチに定評があった。しかし週一の連載は男にとって重荷だった。
絞り出すようなネタが続く男の小説の評判は除々に落ちはじめ、ついに先日、男は編集者から「デビューさせたい新人がいるんだよね」という遠回しの最終通告を受けてしまった。

もう後がない。かくなる上は…
追い詰められた男は知らぬうちに狂気のふちにいた。
男は書きかけの原稿用紙を全て消した後、脇にあったノートパソコンに目を移し、以前から目をつけていた無名作家のブログにアクセスした。

どうせ無名作家だ。バレはしない。
男はそこあった「円」という題名の小説を原稿用紙に写しはじめた。

面白いのはここからだ。
書いては消し、消しては書いての繰り返し。