アリのゴン太

ある晴れた夏の日のことです。

女王アリは、新しく大人になったアリ達を呼んで、こう言いました。

「暖かい夏がきました。みなさん、年に一度の夏を好きなだけ楽しみましょう。」

女王アリに呼ばれたアリの中に、アリのゴン太がいました。

「よおし。ぼくもいろんな事をやってみよう。」

 

ゴン太は女王アリの部屋を飛び出して、アリの子供がいる部屋にいきました。

「ぼくは、子供の世話を手伝いにきました。」

「やあゴン太。いいところに来てくれた。それじゃあ、子供達の子守りをしておくれ。」

 

子守りの仕事は、子供にご飯をあげたり、泣き止ませたり、それはそれは大変でした。

ゴン太は、大変よく働きました。

しかし、何日か経つとゴン太は、子守りの仕事に飽きてしまいした。

「子守りは飽きたなあ。ぼくにはもっと、

ぼくにふさわしい仕事があるんじゃないだろうか。」

ゴン太は子守りの仕事をやめて、アリの巣の外にでました。

 

アリの国の外にも、たくさんのアリ達がいました。みんなケーキやビスケットを担いで、巣に持ち帰っています。

「ぼくは、食べ物を運ぶ仕事を手伝いにきました。」

「やあゴン太。いいところに来てくれた。それじゃあ、いっしょに運んでおくれ。」

 

食べ物を運ぶ仕事は、どこからか食べ物を見つけてきて、巣に持ち帰る事の繰り返しです。それはそれは大変でした。ゴン太は、大変よく働きました。

しかし、何日か経つと食べ物を運ぶ仕事に飽きてしまいました。

「食べ物を運ぶのは飽きたなあ。ぼくにはもっと、

ぼくにふさわしい仕事があるんじゃないだろうか。」

ゴン太はエサ運びの仕事をやめて、もっと遠くに行ってみました。

 

少し行ったところにキリギリスがいました。キリギリスは自慢のバイオリンで楽しそうに音楽を弾いていました。

「キリギリスさん。遊んでばかりいていいんですか。」

「自慢のバイオリンで、みんなを楽しませてあげるのが私の仕事なんだよ。

遊んでいるわけではないのさ。」

「なるほど。それは立派ですね。ぼくにもバイオリンを教えてくれませんか。」

「いいとも、教えてあげよう。」

 

ゴン太は何日もバイオリンを練習しました。おかげでゴン太は、バイオリンを弾けるようになったのですが、キリギリスのきれいな曲には負けてしまいます。

「いくらやってもキリギリスさんのようにはうまくいかない。

ぼくにはもっと、ぼくにふさわしい仕事があるんじゃないだろうか。」

ゴン太はバイオリンをキリギリスに返して、巣に戻りました。

 

夏が終わり、秋が過ぎて、冬になりました。

アリの巣では、冬になった最初の日にパーティーが開かれました。

アリの巣の全員が女王アリの部屋に集まって、蜜を飲んだり、ケーキを食べたりと大騒ぎ。

「みなさん、今年の夏はどんなことをしましたか?」

女王アリはみんなに尋ねました。

「おいらは、いままでずっとエサを運んでいました。ここに並んでいる料理のいくつかは、おいらが持ってきた料理なんですよ。」

「ぼくは、ずっと子守りをしていたよ。子供はすぐ大きくなるからね。それを見ているだけでも嬉しくなっちゃうよ。」

「私は、キリギリスさんにバイオリンを習ったの。音楽をするのってとっても楽しいです。」

みんな笑顔で話しています。それを聞いてゴン太は、なんだかさみしい気持ちになりました。ゴン太も同じ仕事を一生懸命にやったのに、ひとつも楽しくなかったからです。

「ゴン太は何をしたの?」

ゴン太はしょんぼりして答えました。

「ぼくは、エサを運びました。子守りもしたし、バイオリンも弾きました。

みんなの役に立とうと思っていろいろやったけど、あんまり楽しくはありませんでした。」

女王アリはにっこり笑って言いました。

「それはそれはたくさん働きましたね、ゴン太。立派ですよ。来年は、自分が楽しいと思えることができるといいですね。」

 

そして。

冬のパーティーは、まだまだ続いています。

誰かに連れられて、ゴン太にバイオリンを教えてくれたキリギリスもやってきました。

ゴン太はみんなと一緒に、夜遅くまでパーティーを楽しみました。